宮城県訪問先:医療法人社団鉄祐会祐ホームクリニック
2012年7月4日


宮城県
医療法人社団鉄祐会 祐ホームクリニック
理事長:武藤 真祐先生
訪問日時:201274()17:0018:00

 東京都内にて在宅医療診療所を開設されています、
医療法人社団鉄祐会 祐ホームクリニックが震災後(20119月~)に石巻においても在宅医療診療所を開設され、在宅医療における地域における多職種連携に関して積極的な活動を展開されておられる事から、事務局として訪問させていただきました。



 当初石巻に入られた5月には、大勢入った急性期医療支援は少しずつ引き上げられ、避難所で暮らす人々の思いは「生きていて良かった」から「この先どうなるのだろうか」という不安に変わっていたそうです。武藤先生が特に気になったのが、避難所で暮らす高齢者のADL・認知機能が目立って低下していたことです。特に、要介護3~5の方が集められた介護福祉避難所「遊学館」は、多い時には120名ほどの自立困難と思われる高齢者が、ボランティア医師や看護師、ヘルパーとともに生活をしていました。しかし、それも間もなく閉鎖の時がきます。「仮設住宅等に移った後の高齢者の生活を支える体制が必要だと思いました」と武藤先生。また、石巻では急性期医療を担ってきた石巻市立病院が壊滅的な被害を受け診療機能を失ったことから、入院ベッドが不足し、在宅医療のニーズの高まりが想定されていました。このニーズに対応するには、長期的に復興に関わる活動が必要と考え、武藤先生は石巻での診療所の開設を決めたそうです。

9月に診療を開始してわかったことは、被災地の住民の方々が抱える生活の問題は尋常で、健康を支えるにもそれらの解決・回復なしには到底成し得ないということでした。しかし、それらの住民はどこにどのくらいおられて、どういう問題があるのかは、誰も把握していませんでした。そこで10月から、浸水地域の全戸を11戸訪問し、聞き取りにより現状把握調査を始めました。

 被災後、不眠や憂鬱など、日常生活に支障がある症状が多く出ていること、最も問題となる希死念慮を持つ方の状況、また震災を原因として通院や服薬が途絶えている方など、多くの健康障害が見られている現状を伺い、被災後の復興時期に見られる健康障害に関して学ぶ機会となりました。

また、その後の支援においては、行政を交えて、武藤先生が被災地支援のために組織した「石巻医療圏健康生活復興協議会」の看護師やMSW、ケアマネ―ジャー等の専門職、ボランティア団体等による会議を毎週に開催、個別ケースについてのフォロー方針決定し、実施していきました。この活動は現在も続けられ、来年3月までに約20,000人日ほどの人員で取り組まれるそうです。

右:理事長 武藤真祐先生

医療の面では、新たに祐ホームクリニックが開設し、訪問看護ステーション等の事業所と連携を持ちながら石巻市で在宅医療活動を展開された結果、地元の在宅医療資源の活性化につながり、多くの潜在患者を支える活動に繋がったという事を伺い、地域の在宅医療資源の受け皿に応じた事業展開とその方法を選択することの重要性を感じました。



 新たな土地で人間関係の確立から活動を開始され、地域の方々の生活を支える細やかな活動から住民に求められる住民支援というものが強く心に残りました。

 IT事業のモデル地区として、ITによる情報共有システム導入が始められるというお話にも大変興味がございますので、また是非活動を伺えればと存じます。

 今後ともよろしくお願いいたします。