2012年10月31日水曜日

訪問先:沖縄県 一般社団法人浦添市医師会 在宅医療ネットワーク

訪問先:沖縄県 一般社団法人浦添市医師会 在宅医療ネットワーク
訪問日時:20121031() 14:0016:00
事業担当者:一般社団法人浦添市医師会 大濵篤 先生
                                              (浦添市在宅医療ネット―ワーク代表世話人)
      一般社団法人浦添市医師会 事務長 平良孝様
                      ;         介護支援専門員・看護師  新垣妙子様


在宅チーム医療を担う人材育成事業における、都道府県リーダー研修【20121013()14()開催】が終了し、本格的に各都道府県が行政・医師会・在宅医療連携拠点事業所との顔の見える関係の中で在宅医療を包括した街づくりに向けて取り組みが始まりました。
訪問させて頂きました日程では天候は全て雨~曇りであり、沖縄県=温暖な気候の地域、だと思い込んでおりましたが、国立長寿医療研究センターが位置する愛知県よりも肌寒く、コートを着用して訪問させて頂きました。
しかし、浦添市医師会の皆様な半袖でお迎え下さった事に大変驚きました!

様々な地域性を生活視点からも伺う事ができ、実際に訪問させて頂く事で各地域特性を深く理解し、非常に勉強になります。
 
 
こちらが浦添市医師会事務所です
沖縄県全体の地域特性として、高齢化率 17.2(H24年度沖縄県 人口統計データより) であり、合計特殊出生率は1.87(H22 )と、30年近く全国1位を確保しています。
そして長寿県としても世界的に有名な都道府県です。
高齢者の増加と共に、地域を支える若者も増え続ける、日本全体でみた際には特殊な地域人口動態を呈している地域でもあります。
災害や様々な地域ニーズに変化に耐えうる地域づくりに向け、高齢者支援と共に地域医療を地域で支え守る取り組みを教えて頂きました。


      入口はこちらです

浦添市医師会の事務所前にこのようなポスターが掲示されていました。

 
浦添市、浦添市医師会が中心となって住民の医療相談や疾病予防、在宅医療・介護についても相談対応事業を平成14年から行っておられます。
住民目線での行政の活動と、住民への医療支援を守り提供する医師会の連携が見えます。

浦添市医師会事務所は、浦添市の中心部にあります。
浦添市は那覇空港を保有する那覇市に隣接しており、沖縄県内の閑静な住宅地としても有名です。
沖縄県は全国平均に比較し、医療機関数や医師・看護師数が少ない地域ですが、浦添市は医療・介護資源が豊富な地域になります。
浦添市人口は11万人であり、高齢化率は約14%です。
道を歩いていると多くの赤ちゃんや子供、お母さん方に出会い、活気あふれる地域だと感じました。


    写真左: 副会長 山里将進先生 
  写真中央:  浦添市在宅医療ネットワーク代表 大濵 篤先生



  写真右手前 :  事務長 平良孝様
      
 写真中央   :  介護支援専門員・看護師  新垣妙子様
 
浦添市医師会はもともと中部地区医師会と一体でしたが、平成4に独立し、現在は、医師会員200名以上を抱える大きな市医師会組織です。
そして、平成24年度在宅医療連携拠点事業所である『浦添市在宅医療ネット―ワーク』は平成211月に設立された、在宅医療支援診療所を中心とし病院・診療所・専門医・歯科医師が加盟する医療専門の地域ネットワークです。
長崎県のDrネットをモデルにして11の在宅医療支援診療所を中心にネットワークを、沖縄県で唯一構築されておられます。
12か所の歯科との連携関係が構築されており、口腔ケア支援を対象者に応じて連携支援されておられます。
 

浦添市在宅医療ネットワークの特徴として、市行政との密な連携に基づいた活動が挙げられます。
浦添市在宅医療ネットワークの活動は、浦添市活動に支援することを明記されており、在宅医療に関わる担当課も明確に位置づけられております。
201210月に介護支援専門員出身の松本哲治市長が就任され、今後ますます浦添市在宅医療ネットワークと二人三脚で地域医療の整備に取り組まれます。
また、沖縄県では医療機関が全国平均と比較し少ない地域特性がありますが、都市部のような救急搬送受け入れ困難事例が非常に少ない現状にあります。
救急隊と各医療機関における長年の連携により、円滑な入退院調整が救急隊を含め展開されておられます。人間関係が近い沖縄県の地域性を感じました。

浦添市医師会では、先進的に在宅医療活動を展開されていた診療所を中心にネットワークを構築されている事で、年々在宅医療に関わる医師・医療機関が増えておられます。
全国的に24時間365日の支援体制構築が医師・看護師の大きな負担となっておりますが、こちらでは先駆者の先生方と密な連携を地域のシステム化することで、主治医副主治医体制や専門医による支援体制の構築に繋がり、不安なく新しく在宅医療に参入できる体制に至っています。
一人で行う事が大変な活動も、みんなで負担を分かち合えば乗り越えられるという、連携の大きなメリットを最大限に有効活用されておられます。
在宅医療を先駆的に進められてきた医師による、各患者の終末期における意思決定支援が行われていました。
現在はネットワークに広がり、今では特別養護老人ホーム等でも各住民の希望する最期を確認し、希望に沿った対応に向けて取り組まれています。
赤ちゃんから高齢者みんなが、大好きな自分の地域を愛し、いつまでも暮らせるために、地域みんなで取り組む地域づくりに向けて着実に発展されておられます。
浦添市在宅医療ネットワークでは、ホームページによる情報発信を以前から行われており、今回より多くの多職種を巻き込み精力的に情報発信させる事から、リニューアルをしてより見やすく情報発信をされておられます。在宅医療に関わる資源マップも掲示されておられます。

 
 

実際のホームページ画面です

 
浦添市在宅医療ネットワークのホームページ トップ画面
*研修動画の無料配信もされています。

 
浦添在宅医療ネットワークに当事業開始に伴い、医療専門職(介護支援専門員資格のある看護師)が入られた事で、急性期病院などによる退院調整の実態把握、地域包括支援センターとの更なる連携強化、地域の真の課題抽出、多職種の円滑な連携コーディネートを大きく活躍をされておられます。
情報共有におきましては、経済産業省のモデル事業を受託されまして、地域の多職種によるICTを活用した情報共有システムを開発され、このシステムを在宅医療連携拠点事業において本格始動させてブラッシュアップに取り組まれます。
 
そして、浦添市在宅医療ネットワークは、復興枠の在宅医療連携拠点事業所です。
沖縄県は、地震被害はほとんど発生しておりませんが、台風による災害被害が毎年非常に大きな地域です。
 


 
 
GISを活用された浦添市のハザードマップを作成されておられます。
標高の低い所が赤で明示されており、今後この地図に医療・介護資源を合わせていく予定です。
訪問をさせて頂きました2か月前にも大風17号による大きな被害があった事をうかがいました。
沖縄県は立地条件から毎年台風被害が大きな地域でもあり、このような取り組みは住民の安心安全な暮らしを確保する為に非常に重要な活動だと感じます。
また、沖縄県で初めての取り組みである、多職種研修が2013311日に浦添市で開催されました。
沖縄県医師会を始め、周辺地域へお声かけされ、浦添市以外からも多くのオブザーバー参加に来られていました。現在は、他地域の医師会に浦添市在宅医療ネットワークをモデルにしたネットワーク化が始まっております。
多職種が一同に会する機会が少ない中で、このような浦添市の取り組みが沖縄県の様々な地域での取り組みに面的につながっている事に非常に感動致しました。


地域の医師会と行政がしっかりと協力し、住民の声を聞きながら暮らしやすい街づくりに着実に向かっておられる活動は大変感動しました。

今後のますますの御発展を期待しております。

今後ともよろしくお願いいたします。



2012年10月25日木曜日

鹿児島県訪問先:医療法人明輝会 内村川上内科



訪問日時:20121025日(木) 1400
事業担当者:院長 川上秀一先生
本日は鹿児島県の在宅医療拠点事業所、医療法人明輝会 内村川上内科へ訪問させていただきました。
内村川上内科は連携による機能強化型在宅支援診療所の認定を受けています。
また、地域のかかりつけ医として校医や予防接種対応等、予防・保健支援役割を担っています。
 
内村川上内科は鹿児島市内で昭和50年に19床の有床診療所として開所しました。
外来診療とともに患者のニーズに応じて往診にも対応をしており、平成4年から訪問診療、訪問看護事業も開始しておられます。
地域住民のニーズに対応しながらグループホームや小規模多機能ホームなどの介護施設をもち、法人内で医療と介護の横断的な事業所を構築されています。

往診を希望される地域住民に対応するため平成21年から常勤医2名体制をとり、現在約220名の在宅患者の療養支援を行っています。


院長 川上秀一先生(右端)
 
内村川上内科の在宅医療連携拠点事業活動エリアは、薩摩藩主島津家の鹿児島城(鶴丸城)や、西郷隆盛自決の地として知られている城山公園の北部に位置し、歴史的に大変有名な地域を包括されておられました。
 
こちらの地域では、精神科病院、療養病院を含めて200床規模の病院が多数ありますが、一部の地区には急性期病院がなく、医療資源偏在という特性が見られる地域です。
地域全体を見渡した視点での課題を多職種が共有する事から取り組む事が必要とされ、多職種交流会を隔月で開催されました。

7月・9月に開催した交流会では60以上の医療・介護関連事業所より参加が得られました。

1回多職種交流会では、事前アンケートに基づいてさらなる地域課題抽出のために同職種でのグル-プワークをして連携上の課題抽出を行いました。
2回多職種交流会では、多職種で解決策を導くためのグル-プワークを行いました。
2回連続で参加事業所、参加者が非常に多く、地域関係者の方の在宅医療への関心の高さがうかがえます。

また1019日には、「行政・管理者対象上町地区多職種交流会」を開催し、行政及び上町地区の医療機関、介護事業所など40事業所の管理者67名が参加されました。鹿児島県の在宅看取り率は9.1%と、全国平均12.5%を大きく下回っているため、「それぞれの立場より在宅医療・看取りを考える」とのテーマでグループワークを行い在宅看取りの現状の把握と課題抽出を行いました。

自分たちの地域について多職種で共に考え、地域の目指す方向を一緒に導くという作業が何より重要だと感じます。
 
内村川上内科では情報共有ツール「キュアケアネット」を開発され、法人内で試験運用されています。アップル社のサーバーを利用し、初期費用が比較的安価で、使用者の目的に応じてカスタマイズできるシステムであるという特徴があります。
 各患者の処方内容、ADL情報、主治医やケアマネ担当者名、健康保険や介護保険情報、家族構成、病気に対する理解度、担当者会議の音声記録などの情報を入力でき、アクセス権を持った主治医、訪問看護師、ケアマネージャーなどの多職種だけが閲覧できます。
 情報共有ツールの利用で多職種間の情報連携が円滑に行われることを実証されており、今後はさらにシステムの洗練化に取り組まれます。

 
キュアケアネットの入力や閲覧は、パソコンだけでなく携帯等タブレット端末からもアクセスが可能です。
 

 地域住民への普及啓発活動として鹿児島市北部保健センター主催の認知症講座にて『在宅医療』に関する講和をご講演されました。
また、訪問翌日の1026日には地域住民向けフォーラムを吉野公民館体育館にて開催されます。医師から在宅医療についての講演がある他、エリア内の医療機関や介護事業所の紹介ブースを設置し、実演を交えた参加型フォーラムとなります。

一般住民向けパンフレット「ご存知ですか?『在宅医療』について」を作成し、エリア内の希望各事業所や地域の敬老会等へ配布しました。医師や看護師の意見を取り入れながら、一般住民にわかりやすい表現を用いて在宅医療やサービスについて説明しています。

 
多くの住民へ気軽に医療・介護に関する情報に触れてもらえるような工夫をこらした活動を進められていることは大変勉強になりました。
 
  8月には在宅医療に関する教育・研修として、皮膚・排泄ケア認定看護師を講師に招き、地域の訪問看護ステーション、訪問介護事業所、デイサービス、デイケアの職員を対象に「褥瘡・ストーマケア」勉強会を開催しました。
訪問看護ステーションからのケース報告もあり、活発な意見交換が行われました。

 今まで関わる機会のなかった専門職や住民の皆様と顔の見える関係を持つ事で「地域でできる」がさらに広がりを見せています。

 
ホームページに掲載されている地域資源マップの表紙です 

拠点事業活動で行われた上町地区多職種交流会などの報告も掲載されています


様々な情報媒体を見やすく、暖かみのあるイメージデザインやポップで製作されていることに、情報発信に大変思慮された活動を進められている事を感じます。


地域の有床診療所として在宅医療をはじめ、地域住民とともに活動されてきたことを強く感じます。

お忙しい中ご対応いただき誠にありがとうございました。
今後のますますの御発展を期待しております。

2012年10月24日水曜日

鹿児島県訪問先:社団法人肝属郡医師会 肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院


訪問日時:20121024() 1400

事業担当者:院長 落司孝一先生  地域医療室 坂上陽一様 

本日は、鹿児島県の在宅医療連携拠点事業所、社団法人肝属郡(きもつきぐん)医師会肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院へ訪問させていただきました。
当日は鹿児島市鴨池港からフェリーに乗り、大隅半島の垂水港に到着。肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院方面へ行くバスなどの公共交通機関が利用しづらく、タクシーで伺いました。垂水港から33キロ、35分の道のりです。フェリーから見える桜島の美しさにと自然の雄大さに、鹿児島県の力強さを感じました



とてもよい天気でフェリーから桜島がきれいに見えました。

肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院は昭和56年、高齢・過疎化によってもたらされる地域医療崩壊の回避を目的に、医師会活動方針、住民、行政からの要請に基づき開設されました。
現在、病床はケア・ミックスの208床を常勤医は8名にて地域医療を支えておられます。
 
肝属郡(きもつきぐん)医師会は垂水(たるみ)市、錦江(きんこう)町、南大隅(みなみおおすみ)町の12町を包括しており、鹿児島県内で高齢化率12位の地域である、錦江町(40.0%)、南大隅町(43.3%、九州本土最南端の佐多地区では52.7%)を多職種連携システムの構築などを駆使し地域で支えていけるよう取り組まれています。
地域住民の高齢化とともに、人的資源の減少と医師の高齢化が大きな地域の課題としてあげられています。
錦江町、南大隅町に位置する、へき地診療所には自治医科大学からの医師が週12日に入られて医師が常在しない地域の医療を支えておられます。
地理的に広大な面積を持つ鹿児島県では住民が広範囲に点在しているという地域特性があります。南大隅町在住の高齢患者が肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院への入院や通院に、公共交通網がないためタクシーを利用する場合、片道1万円程度の負担が必要であり、高齢者にニーズの高い『受診行動』が経済的・身体的に大きな負担となっています。
また、救急医療支援体制においても大きな課題があります。
南大隅町佐多分署には救急車が1台しかなく、肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院や隣市の鹿屋市(かのやし)内の病院搬送に60分以上の時間を要します。
救急医療提供体制に限りがある中、こちらの地域では、より円滑な連携により支援提供体制の整備を進めておられます。
急性心筋梗塞、脳卒中、大腿骨頚部骨折、開放骨折など疾病別の搬送先連携パスが活用されています。
地域内の肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院にて患者の状態を確認後、必要時に専門医へ支援を求めます。
鹿児島市内の病院ルートはフェリーを利用しますが、夜間は1時間に1本しか運航されないため、緊急を要する場合、鹿児島県に昨年導入されたドクターヘリを要請することもあるそうです。


地域の地理的説明を行う、当事業担当者 坂上陽一氏


院長 落司孝一先生(右)  地域医療室 坂上陽一様(左)

 在宅医療連携拠点事業の活動開始にあたり、地元の医師会、歯科医師会、薬剤師会、介護事業所、自治体組織・地域包括支援センター等のご協力のもと、連絡協議会を立ち上げました。
行政や介護事業所も含めた顔の見える関係の場は、地域を包括する多職種連携において非常に貴重な場であり、会を重ねる毎に関係者からポジティブなご意見を得ることができています。
連携協議会にて顔の見える関係ができた事で、介護現場からの声を医療へ伝える機会にもなり、介護保険主治医意見書の記入が迅速になるなど円滑な情報共有につながったという効果が現れています。
課題を情報共有することにより、関係者間でのより円滑な地域連携に向けた取り組みにつながっている事がわかりました。 

地域の薬剤師からは、在宅療養患者への効果的な薬物治療支援として、残薬袋を住民に配布し受診時に持参する活動のご提案を受けました。
 各専門職が患者のためにできることを考え、チームの中でそれぞれの専門性を生かすという、多職種協働のメリットが良い方向に動き出している事を感じさせて頂きました。

広範囲なエリアを包括する地域においては、複数の自治体区域の地域特性が多様であるため、自治体間での連携構築の整備が今後の課題となっています。


 
医療相談室・病診連携室の中に在宅医療連携拠点事業事務局があります。
 
訪問看護ステーションは、錦江町、南大隅町にそれぞれ1ヶ所ずつあります。
訪問看護ステーションでは医療材料の供給体制の整備が求められています。
褥瘡処置のガーゼ、吸引用チューブなどの医療材料は、患者の処置内容や状態によって   様々な種類の医療材料の確保が求められます。
訪問診療をする医師も訪問看護ステーションも、多種・大量の医療材料をストックすることが不可能であり、そのために訪問診療をためらう開業医もおられるそうです。
 医療材料の供給方法は他地域でも課題としてあげられており、在宅で安心して療養できる環境を整えるためには早期の取り組みが求められる課題だと感じます。
 
垂水港フェリーターミナルです。


 
肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院の皆様の地域への熱い思いが、地域の皆様と共にますます高まっておられる事に感動的な時間を過ごさせて頂きました。
鹿児島の暑い太陽の様に力強く輝き続ける地域となられなす事をますます期待せずにはいられません。
 
 お忙しい中、ご対応を頂き誠にありがとうございました。
今後ともご指導頂けますようお願いいたします。