2012年12月20日木曜日

東京都訪問先:医療法人社団つくし会 新田クリニック

東京都訪問先:医療法人社団つくし会 新田クリニック
訪問日時  :20121220() 
事業担当者 :村松 伸晃 様

国立市では平成2021年度に東京都のモデル事業の一環として国立市在宅医療推進連絡協議会を立ち上げられ、平成23年度には国立市からの委託事業により、国立市在宅療養推進連絡協議会が立ち上げられました。新田クリニック様は市とともにこの協議会の事務局として関わってこられ、このたびの在宅医療連携拠点事業でも国立市在宅療養推進連絡協議会を核として話し合いを重ねながら活動をされています。

国立市役所健康福祉部高齢者支援課課長補佐
地域包括ケア・在宅療養推進担当係長
葛原千恵子様(保健師) (左)
左から、新田國夫医師、
国立市役所健康福祉部地域包括ケア推進担当課長
大川潤一様(主任介護支援専門員・社会福祉士・介護福祉士

 新田クリニックの在宅医療連携拠点活動の特徴は、国立市行政と国立市医師会、住民が密接に連携した活動が展開されているという点です。
これは、今までの新田クリニックの取組みの結果が、厚い信頼となり今回の取組みに繋がったのだと感じます。

新田先生は「在宅療養市民勉強会」として市内各地域の集会所などへ出かけ、1020人程の人々と直接触れ合い、ざっくばらんに「なぜ在宅なのか」といったお話をされています。地域の方からは「待っていました」「こんなところによく来てくれて」といった声もあり、質問攻めにあうこともあるとのこと。住民さん側から「先生が認知症になったらどんな医療と介護を望むのか」といったテーマが出されたり、住民の本音が聞けることも多いそうです。
国立市でも、まずは一人ひとりへの対応を大切にし、それを積み重ねて地域の課題や認知症の方の課題などの大きな課題を見つめ、そこに提案、対応していくという流れを大切にされていました。このような個々の住民を大切にした活動が、より暮らしやすい地域づくりに繋がっていくのだと感じられました。

また新田先生は、特に認知症の方の在宅療養は医療だけでは不十分であり、何が問題なのか、どのように仕組みを作っていくべきかを、かかわる人々が共有化して考えていくべきだとおっしゃっています。
新田クリニックの在宅医療連携拠点事業所活動の特徴として、認知症対策に力を入れて展開された事も大きな特徴です。
介護保険運営協議会では、生活実態も踏まえて現状のデータをきちんと把握することから始めようとされており、認知症の単身独居高齢者の地区別人数把握なども可能となっていました。
認知症になっても地域で安心して暮らせるためにはどうしたらいいか、自分は何ができるのか、これは生活者としての市民一人一人の問題です。在宅療養推進協議会では市民に参加を呼び掛け、認知症介護研究・研修センターの永田久美子先生の協力を得ながら、アクションミーティング(グループワーク)を重ねました。この中で出てきたテーマの一つに「市民の理解」があり、行政の理解を得て、10月の第3土曜日が国立市認知症の日と制定されました。市民の提案と施策がつながった成果です。
他にも、市と協力しながら様々な活動をされています。
たとえば、地域包括支援センターの業務を整理し、要支援の担当者を分けるなどして、市直営で地域支援事業の機能強化に注力されていました。結果的には目的が明確化して動きやすくなり、活動しやすい環境を整えることができたそうです。このように、環境を整えることも重要であると感じました。
また、食で基本的な生活基盤を支えることを重視され、介護保険では賄えない週14食の配食サービスを行政と協働して可能にされました。また、専門職のみならず市民向けにも摂食・嚥下研修を行っています。
在宅療養における他職種連携ツールである「生き活きノート」は、FromToで連絡欄を設けたところ相手がはっきりしてより効果的に利用できるようになったそうです。IT化に向けた検討もなされていましたが、中でもプリントアウトすると紙のノートと同じものが出てくるよう考えられており、これはわかりやすく素晴らしいアイディアだと思いました。ケアマネジャーさんたちに利用してもらえるよう、ケアマネ会議を開催して、このノートを紹介していくとのことです。

多くの活動をされており、たくさんの資料を拝見しました


 さらに、分科会として災害対策委員会も立ち上げられました。要介護者をターゲットとしており、医師会、歯科医師会、薬剤師会が参加しています。加えて市の様々な部課が入るので、所管だけにとらわれず、どのような地域にしていくのかという視点が大切になります。これは各職種・各部署が地域のあり方を考えるチャンスになっているとのことでした。市長も在宅療養に理解があることも、市の各部署挙げての取り組みに繋がっているようです。第5期の介護保険事業計画の中でも、地域包括ケアの実現に向けた医療と介護の連携が章立てされています。

防災や認知症対策などは行政や医療関係者だけでできることではなく、住民も含めて地域全体が繋がり取組むことで、いつまでも安全で安心して暮らせるまちづくりにつながるという事を活動の実際を通して強く感じました。

住民や行政とともに地域づくりをされており、
大変勉強になりました。

今後ともご指導の程よろしくお願い致します!!