2012年12月20日木曜日

東京都訪問先:株式会社ケアーズ 白十字訪問看護ステーション 暮らしの保健室

東京都訪問先:株式会社ケアーズ 白十字訪問看護ステーション
       暮らしの保健室
訪問日時  :2012年12月20日(木) 10時~12時
当事業担当者:所長 秋山正子様

 株式会社ケアーズ 白十字訪問看護ステーションが運営する、「暮らしの保健室」に訪問させていただきました。大きな団地のある商店街の一角にあり、入り口からもとても和やかな、ゆったりとしたカフェのような雰囲気が伝わってきます。

 白十字訪問看護ステーションは、大都会新宿区を中心に訪問看護活動を展開している、20年以上の歴史のある在宅医療連携拠点事業所です。
 平成23年度在宅医療連携拠点事業から関わっていただいております。

商店街の一角にある「暮らしの保健室」は、入りやすい雰囲気


 事業担当者の秋山様は市ヶ谷のマザーテレサとしてメディアに取り上げられた訪問看護師で、2007年から各地で在宅療養推進のための市民向けの講演活動を行っていらっしゃいます。(メディア情報
 イギリスには「マギーズセンター」という、がんの患者さんがいつでも気軽に相談できる場所があります。秋山様がこのような場所が日本でも必要だと考えていたところ、2010年に講演を聞いていた参加者の方から「70歳になるので何か社会貢献をしたい、自分の持っている店舗を安く貸すので活用してほしい」という申し出を受け、この「暮らしの保健室」が実現しました。ボランティアの方がどなたか常に在室しており、午後からは専門職にも相談できたりと、マギーズセンターと同じような無料で気軽に相談できる場所となっています。この1年間の利用者数は約1,500人、夏休みなどは小学生が遊びに来ることもあるそうで、地域に根差した場所になっていることがうかがえます。


年齢を問わず、心を開いて相談できるような環境

 暮らしの保健室はサロン的な要素を取り入れています。
相談する人が心を開けるような環境が必要であり、このスタイルが必要とのこと。訪問時にも複数の方がいらしていましたが、とても居心地がよさそうで、終始穏やかな談話が続いていました。

穏やかに居心地良く過ごされる皆様

 この「場所」があることが強みだと秋山様はおっしゃいます。利用者のみならず地域包括支援センターの職員や保健師、行政の窓口の方や、病院で働く専門職の方がいらっしゃることもあり、地域ケア会議の開催場所として活用されることもあるそうです。このような場に様々な立場の人々が集うことで、地域での療養生活についての理解が進み、連携が進んでいくことが強く期待されます。
 また、ここでは連携を題材に盛り込んだ勉強会も行われています。地域包括支援センターのスタッフや医師、自立支援の住まいをサポートする方などにも参加してもらえるよう声をかけ、それぞれの立場で興味を持ってもらえるよう事例展開をして討議をしていきます。話しやすい規模、空間の中で、小さな声を積み重ねてお互いの理解を深めるうちに、お互いのスキルアップにつながっているようです。
 参加の声掛けの際には、訪問看護で培った医師との顔なじみの関係が強みです。医師会からも紙面で連絡してもらうよう協力を得ていますが、在宅を専門にしている開業医の先生は医師会に所属していないことも多く、個別に直接お誘いしています。その結果、勉強会で初めて会う医師同士もいらっしゃるそうで、医師同士の連携のきっかけになる可能性も感じました。

 こちらの地域における特性として、資源が多く、患者も多いことから効率的な連携が取りにくい、という都市型の連携阻害要因を呈している事を伺いました。
 現在、新宿区民は30万人を超えており、急性期病院等の医療機関も非常に豊富な地域です。その中で、地域の多職種をつなぐ場が必要であり、時間をかけて多職種をつなぐ仕組み作りを進めておられます。
 新宿区には多くの大型急性期病院があることから、病院のスタッフにも、地域における患者の生活を中心とした支援について一緒に考えられる活動を進めていくことの大切さを強く感じ、人材育成教育などを含めて活動を続けられています。

所長  秋山 正子様

 多くの人口を抱える地域や広域の地域で活動を面的に展開するためには、核となり共に活動頂ける仲間を育成していく事も重要な視点です。
こちらでは、ボランティアリーダーの育成も行われており、継続的に地域が地域の力で支えあえるような取り組みが進められています。拠点事業所が全ての活動を継続的に抱えるのではなく、地域の方々の協力を得て、地域の中で活動を受け継がれていく事が、それぞれの地域の未来を変えていくものと感じます。

 ある方が在宅療養を希望された際、主治医が一人で開業されている先生であるために、24時間訪問体制の在宅療養支援診療所を副主治医として在宅での看取りまで至ったケースのお話をお聞きしました。医師会との連携のもと、このような連携調整の役割も担っていらっしゃいました。このようなケースが勉強会で伝えられることにより、ほかのケースでもより具体的に連携に向けた検討が可能になるのだと思います。

 大病院が近くに多いため、かかりつけが病院という方も多い地域ですが、この団地は高齢化率約47%で独居の方も多くいらっしゃいます。看取りまでできる街づくりの必要性を改めて強く感じ、街づくりの一環として「暮らしの保健室」があることがよくわかりました。

 秋山様はこの場で利用者を待つだけではなく、住民向けの健康教育の場にも何度も出かけて行ったり、若い人に向けてインターネットを活用したりと、様々な方法で「暮らしの保健室」を知ってもらえるよう広報活動を行っているそうです。
 行政から「がん相談窓口」事業受託しており、地域の1プレイヤーとして、行政と共に地域住民の健康増進につながる活動も展開されております。そのことが、広報の力もあり、広く住民に周知され、信頼される場となっているという事も感じます。
 地域の実情に応じて、地域の多くの方々を巻き込み、地域の未来を描きながら活動される姿に、在宅医療連携拠点事業所としての本質を感じることが出来ました。



生活に密着した気軽な相談場所は、
地域の中で今後ますます重要になります。
ご対応を頂き誠にありがとうございます!

今後ともご指導の程よろしくお願い致します!!