2012年10月24日水曜日

鹿児島県訪問先:社団法人肝属郡医師会 肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院


訪問日時:20121024() 1400

事業担当者:院長 落司孝一先生  地域医療室 坂上陽一様 

本日は、鹿児島県の在宅医療連携拠点事業所、社団法人肝属郡(きもつきぐん)医師会肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院へ訪問させていただきました。
当日は鹿児島市鴨池港からフェリーに乗り、大隅半島の垂水港に到着。肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院方面へ行くバスなどの公共交通機関が利用しづらく、タクシーで伺いました。垂水港から33キロ、35分の道のりです。フェリーから見える桜島の美しさにと自然の雄大さに、鹿児島県の力強さを感じました



とてもよい天気でフェリーから桜島がきれいに見えました。

肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院は昭和56年、高齢・過疎化によってもたらされる地域医療崩壊の回避を目的に、医師会活動方針、住民、行政からの要請に基づき開設されました。
現在、病床はケア・ミックスの208床を常勤医は8名にて地域医療を支えておられます。
 
肝属郡(きもつきぐん)医師会は垂水(たるみ)市、錦江(きんこう)町、南大隅(みなみおおすみ)町の12町を包括しており、鹿児島県内で高齢化率12位の地域である、錦江町(40.0%)、南大隅町(43.3%、九州本土最南端の佐多地区では52.7%)を多職種連携システムの構築などを駆使し地域で支えていけるよう取り組まれています。
地域住民の高齢化とともに、人的資源の減少と医師の高齢化が大きな地域の課題としてあげられています。
錦江町、南大隅町に位置する、へき地診療所には自治医科大学からの医師が週12日に入られて医師が常在しない地域の医療を支えておられます。
地理的に広大な面積を持つ鹿児島県では住民が広範囲に点在しているという地域特性があります。南大隅町在住の高齢患者が肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院への入院や通院に、公共交通網がないためタクシーを利用する場合、片道1万円程度の負担が必要であり、高齢者にニーズの高い『受診行動』が経済的・身体的に大きな負担となっています。
また、救急医療支援体制においても大きな課題があります。
南大隅町佐多分署には救急車が1台しかなく、肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院や隣市の鹿屋市(かのやし)内の病院搬送に60分以上の時間を要します。
救急医療提供体制に限りがある中、こちらの地域では、より円滑な連携により支援提供体制の整備を進めておられます。
急性心筋梗塞、脳卒中、大腿骨頚部骨折、開放骨折など疾病別の搬送先連携パスが活用されています。
地域内の肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院にて患者の状態を確認後、必要時に専門医へ支援を求めます。
鹿児島市内の病院ルートはフェリーを利用しますが、夜間は1時間に1本しか運航されないため、緊急を要する場合、鹿児島県に昨年導入されたドクターヘリを要請することもあるそうです。


地域の地理的説明を行う、当事業担当者 坂上陽一氏


院長 落司孝一先生(右)  地域医療室 坂上陽一様(左)

 在宅医療連携拠点事業の活動開始にあたり、地元の医師会、歯科医師会、薬剤師会、介護事業所、自治体組織・地域包括支援センター等のご協力のもと、連絡協議会を立ち上げました。
行政や介護事業所も含めた顔の見える関係の場は、地域を包括する多職種連携において非常に貴重な場であり、会を重ねる毎に関係者からポジティブなご意見を得ることができています。
連携協議会にて顔の見える関係ができた事で、介護現場からの声を医療へ伝える機会にもなり、介護保険主治医意見書の記入が迅速になるなど円滑な情報共有につながったという効果が現れています。
課題を情報共有することにより、関係者間でのより円滑な地域連携に向けた取り組みにつながっている事がわかりました。 

地域の薬剤師からは、在宅療養患者への効果的な薬物治療支援として、残薬袋を住民に配布し受診時に持参する活動のご提案を受けました。
 各専門職が患者のためにできることを考え、チームの中でそれぞれの専門性を生かすという、多職種協働のメリットが良い方向に動き出している事を感じさせて頂きました。

広範囲なエリアを包括する地域においては、複数の自治体区域の地域特性が多様であるため、自治体間での連携構築の整備が今後の課題となっています。


 
医療相談室・病診連携室の中に在宅医療連携拠点事業事務局があります。
 
訪問看護ステーションは、錦江町、南大隅町にそれぞれ1ヶ所ずつあります。
訪問看護ステーションでは医療材料の供給体制の整備が求められています。
褥瘡処置のガーゼ、吸引用チューブなどの医療材料は、患者の処置内容や状態によって   様々な種類の医療材料の確保が求められます。
訪問診療をする医師も訪問看護ステーションも、多種・大量の医療材料をストックすることが不可能であり、そのために訪問診療をためらう開業医もおられるそうです。
 医療材料の供給方法は他地域でも課題としてあげられており、在宅で安心して療養できる環境を整えるためには早期の取り組みが求められる課題だと感じます。
 
垂水港フェリーターミナルです。


 
肝属郡(きもつきぐん)医師会立病院の皆様の地域への熱い思いが、地域の皆様と共にますます高まっておられる事に感動的な時間を過ごさせて頂きました。
鹿児島の暑い太陽の様に力強く輝き続ける地域となられなす事をますます期待せずにはいられません。
 
 お忙しい中、ご対応を頂き誠にありがとうございました。
今後ともご指導頂けますようお願いいたします。