2012年9月3日月曜日

北海道訪問先:夕張市立診療所 PART2(後編)

北海道訪問先:夕張市立診療所  
事業担当者 :理事長 八田政浩先生、
       所長 森田洋之先生(20134月より鹿児島県ナカノ在宅医療クリニックへ赴任されました)
       理事補佐 中原宏和様、在宅医療介護連携室 横田久美子様、
       事務長 越中幸一様、施設長 佐村淳知様、
       訪問介護責任者 山﨑博司様、 
訪問日時 :201393()  1240分~15

PART1が前編の内容です。http://zaitakurenkei.blogspot.jp/2012/09/part1.html

PART1からの内容に続きます~~
現在は有床診療所と共に、デイケアサービスや老人保健施設も運営されています。


理事長が歯科診療を専門にされている事から、在宅療養患者に対して歯科診療サービスをされておられます。
当事業に中心的役割を担っていただいております、横田室長、越中事務長から当事業や地域におけるご説明を頂きました。

右手前 :在宅医療介護連携室 横田久美子様
中央  :  事務長            越中幸一様
地域の開業医の先生方は外来診療所とともに、必要時の往診対応をされておられます。
夕張市では、地域包括支援センターが直営で行われており、市の保健師が活動されておられます。
今はまだ密な連携という状態ではありませんが、在宅医療連携拠点と地域包括支援センターとの連携と、今後の地域包括ケア構築に向けて、自転車のように2つの連動する車輪の1つの地域を円滑に動かしていく体制が必要不可欠ですので、今後の連携構築に向けて取り組んでいただける事を期待しております。

 以前は市民病院と地域のかかりつけ医との病診連携は患者の紹介等を通して行われていました。
財政破綻を機に診療所同士の関係となり、診診連携の構築への取り組みが疎遠になっていましたが、夕張市全体の面展開に向けて市全体の医療ネットワークを構築する為に連携を進められることとなりました。

市立病院の時代と、公設民営化された現在では、住民の認識と、関係者間の認識に一致していない役割期待があり、夕張診療所特有の現象が見られています。
住民は、市立の機関なので何がなんでも住民の為に努めてもらえるはずであり、無医村などへも積極的に介入してほしい、と感じられています。
しかし、公設民営化されている事から、夕張診療所だけに市行政の強力な支援と承認をすることが難しく、住民期待に準じた支援が行えないという難しさが生じていました。

 今まで地域の診療所間での連携が希薄であったことから、今後市全体での連携を構築することで、それぞれの役割分担と住民の役割期待を整合したうえでの、夕張市全体での地域包括ケアシステム構築に向けて取り組むことが出来ればと感じます。

 3次救急医療については、今は岩見沢市立病院や、栗山赤十字病院に急性期の重傷な救急処置が必要な患者の対応をお願いしています。

周囲の地域の急性期医療機関についても、医師不足等がみられていますので、関係者全てで救急機能の維持を考える必要があり、救急隊と相談して、夕張市立診療所のかかりつけ患者や住民について、直接市外の3次救急医療機関へ直接運ばず、まず夕張市立診療所にて相談をさせて頂き、本当に必要であれば3次救急医療機関にお願いするという体制をとられています。
こちらが命のバトンです!

地域の高齢患者においても、見知らない遠く離れた病院に意図せず運ばれていくよりも、できる事ならなじみのある医師や看護師に見てほしいという希望もあり、住民の希望に即した対応を構築されています。
東京都港区で活用されている『命のバトン』をかかりつけ患者様に配布を進められています。
冷蔵庫にかかりつけ医名称や病状などを医師等が記入し、冷蔵庫に入れて保管していただきます。
救急隊とも情報共有している事から、まず救急隊は冷蔵庫内の『命のバトン』を確認されて、必要時に必要なところへ連絡相談をされてから、適切な事業所へ搬送をされます。
 災害時においても、かかりつけ患者の情報(医療的支援の必要度が高い方等)を各事業所へ情報共有されておられます。

また、夕張市では人材や資源が非常に不足しています。
看護師は地元の方々によって24時間体制を構築されていますが、需要に対して共有が不足している状態にあります。
医師は、北海道以外から来られており、志の高い若い医師が他の医療機関勤務と併任にて活動されておられます。
PTは不足しており、デイケアでの通所リハビリが提供できない状況にあります。
当事業においても、MSWの雇用が必須となっておりますが、募集を様々な方面にアプローチをされていますが、人材不足により雇用が難しい現状にあります。

 その中でも、できる限りの活動を日々展開されておられます。
夕張診療所での職員の皆様は、地域を愛し、自分たちのできることを一生懸命地域の為に取り組まれている事を、実際に訪問させて頂き強く感じました。

横田室長は、地域の社会福祉協議会が運営されているご高齢者の集まる場所を設置されておられますので、そちらに定期的に横田室長が相談窓口を開設させて頂けるようご相談し、現在は開設されています。
こちらは、東京都の在宅医療連携拠点事業所である、白十字訪問看護ステーション 秋山正子さんが開設されている『暮らしの保健室』をモデルにしておられます。

住民の方々へのきめ細かいご相談によって、予防や必要な支援の適切なタイミングでの提供、そして住民の方々への安心した暮らしを支援することが出来ます。


夕張診療所では『支える医療』として、岩見沢等の他の地域における在宅医療支援診療所や後方支援病棟などの情報を含めた地域資源マップや人口などの地域情報を掲載されておられます。
夕張市が『介護人材育成事業』を平成23年度から受託され、介護に関する人材育成や地域の資源情報の把握などを展開されており、在宅医療連携拠点事業との連動し、地域情報を共有されて、地域包括ケアに向けた取り組みに向けて進められます。

 
各多職種が対等の関係の中で、各患者さんの情報を共有し、今後の方向性を一緒になって相談し決定しながら進められているご様子も見学させて頂きました。
夕張市では学生の自主的な実習なども受け入れておられます。
地域医療における専門職の役割と多職種連携を実感できる非常に成熟した地域でもあると感じます。
各地域では医療と介護の連携において、『心の壁』が阻害要因として存在することを把握しておりますが、こちらでは対等の関係の中での連携がありました。
とても感動したことを今でも鮮明に覚えています!
 
往診にも同行をさせて頂きました☆
 
森田所長が運転されながら、各患者さんの事前説明を何も見ずに詳しくご説明下さったのちに訪問させて頂きました。
地域の方々ともに一緒に生活され、地域と一つの家族のように関わられ活動される医師としての背中を見せて頂きました。
北海道薬科大学との連携による、人材育成に対する活動も展開されておられました。

ITの導入による、情報共有の円滑化促進と関係者の負担軽減に取り組まれています。
使用されているのは、サイボウズ社のシステムです。
 
過疎地域や参観地域などでは、ITを活用した情報共有システムは必要不可欠だとの声も受けております。
冬は大量の雪で自由な行き来が難しい地域においては、情報ネットワークを構築することも必要な手段だと感じます。
夕張診療所では、行政との連携も少し前進しております。
201322日に札幌で開催されました、北海道・北関東ブロック活動発表会には夕張市行政からご臨席を頂き、ご挨拶をさせて頂く機会を頂きました。
当事業事務局として、大変嬉しい瞬間でした。
まことにありがとうございます。
夕張市では、キタキツネや鹿が日常的に目にされる自然豊かな地域です。
熊もたまに目撃されるようです。
厳しい大自然の中でも、日本の経済復興を支えられた方々の安心した暮らしを守るために、地域の皆様と協力し活動されている、『在宅医療連携拠点事業所』の皆様がおられる事を感謝申し上げます。
『メロンねっと』が夕張メロンの網目のように、地域をくまなく包み込む強固な人のネットとなります事を強く願います。
 お忙しい中、貴重な見学やお話をご提供頂き誠にありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。