2012年9月12日水曜日

和歌山県訪問先:国保すさみ病院


訪問日時   :2012912日 15時~17
当事業担当者 :院長 高垣有作先生

 本日は和歌山県の在宅医療連携拠点事業所、すさみ町へ訪問させていただきました。
すさみ町は自治体の在宅医療連携拠点事業所であり、国保すさみ町病院が当事業においても、町の医療・介護・福祉の中心として、自治体の各組織と共に活動を展開されている事から、国保すさみ町病院へ訪問をさせて頂きました。

山の緑と静かな空気、青く広がる空が印象的です。


国保すさみ病院は一般病床48床、療養病床24床のすさみ町国民健康保険直営の病院です。すさみ町は人口5000人弱、高齢化率40%超、町土の93%が林野で占められており、住民は病院周辺や海岸部、山間部の佐本、大附、大鎌地区等広域に点在する形で住んでおられるそうです。
現在すさみ町には診療所が3カ所あり、国保すさみ病院から医師が週1回または2週に1回診察を行っていて、町保健師が診療所の診療日に同席して高齢者の状況把握をされています。


 
町の職員をみまもり隊として集落に派遣して町民の方に声掛けする取り組みもされています。
また80歳以上の高齢者独居については、社会福祉協議会に委託してヘルパーの訪問の空き時間に不定期で声掛けをしてもらっているそうです。必要があれば包括支援センターに連絡が入り、医療や介護につなげています。
 町全体に見守りシステムがあり、行政からのアウトリーチが盛んな地域だということがわかります。

 
 すさみ町では平成21年度に経済産業省「地域見守り支援システム実証事業」として、中山間地域におけるIT技術を活用した医療・介護・福祉・健康情報ネットワークを基盤とする地域見守り支援システムのサービスモデルを構築されておられます。

 この地域見守り支援システムは、一つのデータベースの中に、医療側の処方・検査等の診療情報、介護側のヘルパー等の訪問記録、行政側の町が行っている検診、予防接種の記録等のデータをそれぞれアップロードし、関係者が情報共有できる仕組みです。

また独居高齢者に対しては、住居に設置した赤外線センサーを通じて遠隔見守りや異常時に自動通報するシステムを稼働させています。

現在経済産業省の事業は終了していますが、すさみ町が継続して運用しており、異常時自動通報システムで年間4例が救急搬送されたそうです。
熱中症や脱水の方の早期発見・早期治療を行われました。
 
在宅医療連携拠点事業では、この地域見守り支援システムをさらに発展させ、情報入力の省略化や負担軽減をして情報を共有し、医療と介護の多職種連携を促進されます。
ヘルパーや訪問看護師がIPADを使って現場で簡単に入力し、持ち帰って接続するだけで診療報酬や介護報酬の請求も可能になるとのことです。

 
 
IPADで見る、24時間緊急通報システム


 
国保すさみ病院の訪問看護ステーションは2年前に開設されました。
対象者が点在していて民間の訪問看護ステーションの参入が難しい山間部を中心に、看護師3名で24時間365日対応で訪問されています。利用者は現在32名、これまで80名に関わっておられます。開設当初、訪問看護を受ける人は介護保険利用者の5%でしたが、現在は25%に増加しているそうです。

また国保すさみ病院の医師が各地区の集会所等へ出向いて健康づくりの出前講座を開いています。内科診断学を一般向けに分かりやすく説明することで、住民に医療の正しい知識を身につけてもらい、自分の体は自分で守ることを目的としています。この取り組みは4年前から行っており、休日時間外受診の減少および診療時間内受診の増加など、住民の正しい受療行動に結びついています。

2055年には日本の高齢化率が40%を超えると推定されています。すさみ町の現在の姿は未来の日本の縮図であると考えることもできます。
限られた医療資源を活用し、地域に対応した介護予防、医療を進めておられるすさみ町の取り組みは、今後の過疎化高齢化の進んだ地域における在宅医療、地域包括ケアのモデルになると思われます。


 
太平洋に面したすさみ町は、南海トラフ巨大地震の津波浸水・地震被害や台風による水害が想定される地域でもあります。

厚生労働省の医療情報連携・保全基盤推進事業に基づき、災害時の効率的な医療活動の展開を可能にするため、県が中心となって国保すさみ病院を含む和歌山県内8病院が連携して、互いにカルテのデータを閲覧できる仕組みを今後導入する計画です。

また津波、台風被害災害対応として衛星電話を確保し、災害用物品の備蓄も増やしていきたいと考えておられました。

 
救急医師派遣自動車(ドクターカー)一般車を改造して緊急車両の指定を受けています。

急激な高齢化が見られている日本において、各地域が主体的に限られた資源と限られたマンパワーを最大効果を得られるように協力・連携する仕組み作りが今後の課題だともいえます。
地域のみんなで出来ることを考え、協力し、実践されている、すさみ町の取り組みは大変勉強になりました。
そして、地域の無限大の可能性を感じる機会ともなりました。
 
お忙しい中、十分なご教示を頂き誠にありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。