2012年9月19日水曜日

静岡県訪問先:静岡県 公立森町家庭医療クリニック

訪問日時:2012919日(水)1300
当事業担当者:公立森町病院 院長 中村昌樹先生
 


本日は静岡県の在宅医療連携拠点事業所、公立森町家庭医療クリニックを訪問させていただきました。
クリニックのある森町は静岡県の中東遠地域の北部に位置しており、人口2万人あまりで農業、林業が主な産業です。
当日は天竜浜名湖鉄道に乗り遠州森駅よりお伺いしましたが、クリニックの500m南には新東名高速道路が走っていて、遠州森町パーキングエリアもすぐ近くにあります。

 訪問をさせて頂きました日はあいにくの雨天でしたが、小雨が降る静けさの中でも緑が元気良く輝いている街並みは、心癒される時間でした。



 
公立森町家庭医療クリニックの併設病院である、公立森町病院は平成4年から病院として在宅医療に取り組んでいます。

公立森町家庭医療クリニックは、公立森町病院での家庭医療外来の診療を受け継ぎ、「静岡家庭医養成プロジェクト」に基づいた家庭医の養成事業を行う施設として、平成2312月に開院しました。ともに森町の自治体が運営する医療機関であり、公立森町病院における在宅医療の実績を基に協力して在宅医療連携拠点事業を進められる予定です。
 
*「静岡家庭医養成プロジェクト」とは*
磐田市、菊川市、森町の21町が、世界標準の家庭医を養成する目的で平成224月に立ち上げました。
海外の家庭医(General Practitioner, Home doctor) システムをベースにしたプログラムであり、小児や妊産婦を含めた様々な対象へ様々な領域疾患の診療が可能な家庭医を養成するプログラムを組んでいます。
 公立森町家庭医療クリニックには、訪問時7名の方が家庭医研修医として在籍しておられました。
公立森町家庭医療クリニックで地域医療の魅力と住民から学び支えられる医師の在り方等を十分に学ばれた家庭医が、様々な地域で医療を支えられる未来を待ち望んでやみません。


 
 

 
静岡県の中東遠2次医療圏地域では6市町(磐田市、袋井市、掛川市、菊川市、御前崎市、森町)がそれぞれ運営する公立病院が連携して急性期医療を担ってきました。(平成255月には、掛川市立総合病院と袋井市立袋井市民病院が統合し、中東遠総合医療センターが開院)
この2次医療圏内の人口10万人あたりの医師数は全国平均の半分です。
 

 公立森町病院では医師不足の地域の実情に危機意識を持った一般住民の方が地域医療を主体的に考えていこうと、森町病院友の会(病院を支える会)を立ち上がりました。
この会は患者の会ではなく、町民の有志56人から始まり、現在では400人以上が参加されています。
毎年、森町病院友の会主催の地域懇談会が各地区で行われており、常に町民とともに情報共有しながら、地域に密着した医療を行ってこられました。
住民の求める地域医療・そしてまちづくりへの取り組みが展開されています。

 森町では、町内各戸に同報無線の受信機を設置し、役場の事業や取り組みを朝、夕放送しています。これを使用し、公立森町病院の院長が在宅医療の広報をする予定です。
また在宅医療連携拠点事業では、在宅医療についての住民向け講演会を9月に開催し、住民向けに作成した在宅医療のパンフレットを配布予定です。
 

 
町内各戸に設置されている同報無線の受信機



 
院長の中村先生は、地域を支えるためには病院として退院支援が大変重要だと考えておられます。退院する際の退院支援として「在宅医療」という選択肢を提示して患者に選択してもらうには、医師を含めた退院支援に関わる担当者が、在宅でどういうサービスが提供できるか、在宅療養を可能にするために必要な医療・サービスは何かなど、在宅医療に対する十分な情報を持っていることが必要だと話されました。
また患者と医療や介護の関係多職種との懸け橋となる在宅医療コーディネーターの育成も必要だと考えています。訪問看護が介入していない患者の24時間対応コールセンター機能、患者宅の道順把握など、看護という専門的な視点よりもより患者に近い立場で患者の代弁者、相談役の役割を担います。
在宅医療コーディネーターは医療的有資格者ではなく、各専門職の情報連結と円滑なマネージメントが可能となる人材を想定されており、今後の育成事業が非常に期待されます。
 
治療主体の急性期病院と、生活支援主体のかかりつけ医や町医者が、お互いの役割を明確にして共通認識を持って連携していくことが重要であり、急性期病院の医師とかかりつけ医のダブル主治医制の導入も在宅医療の普及に有効ではないかと考えておられました。

 こちらの地域においては、住民アンケート結果から、70%以上が可能であれば家で最期まで過ごしたいという希望をお持ちでした。
住民間において『在宅医療』は、急性期病院から見捨てられたと感じる不安・寂しさから、在宅医療が導入できない住民もおられます。

住民の希望に基づき、求められる医療支援提供体制を整える事が、地域に求められるこれからの医療の姿の一つだと感じます。

こちらのクリニックでは小児の来所も多い事から、所内が楽しめるレイアウトがされています。



 
 
足跡をたどると・・・
診察室のドアは部屋ごとに色が違い、いろいろな動物が描かれています。
見学中、予防接種が怖くて泣きじゃくるお子さんが来所中でした。 
 

静岡県は静岡県医師会が平成2310月より在宅医療推進センターを開所し、在宅医療体制の整備・推進について他の都道府県に先駆けて先進的に取り組んでおられます。
 中東遠地域におきましても在宅医療推進にむけて、公立森町家庭医療クリニック、公立森町病院の皆様のさらなるご活躍を期待しております。
貴重なお時間をいただきありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。