2012年12月26日水曜日

山形県訪問先:社団法人鶴岡地区医師会

山形県訪問先:社団法人鶴岡地区医師会
訪問日時  :2012年12月26日(木) 13時半~
当事業担当者:総務課地域連携係 係長 遠藤 貴恵 様

 年末の冬の山形県鶴岡市へ訪問させて頂きました。
 当日は前夜から豪雪となり、下から舞い上がる雪を初めて経験しながらお伺いしました。



 鶴岡地区医師会館に到着すると、在宅医療連携拠点事業ご担当の遠藤様が出迎えてくださいました。寒い中外まで出てきて迎えてくださったことがとても嬉しかったです。このように地域の方々の心をつないでおられるのだとも感じた瞬間でした。

 鶴岡地区医師会様では、在宅医療連携拠点事業室「ほたる」を設立され、看護師、ソーシャルワーカー、事務員を配置して連携推進活動に取り組んでいらっしゃいます。
 「ほたる」の最大の強みは、平成23年度在宅医療連携拠点事業開始時に十分な検討を経た窓口設置と人員配置、そして活動に応じた組織編成であると感じています。郡市医師会の内外で顔の見える関係の構築と組織同士の連携体制を結ぶためには、「ほたる」の事務局3名の活動が非常に重要であり、ほたるの在宅医療連携拠点活動が目覚ましい成果につなげられた取組の秘訣であると強く感じます。
 医師会員のマネージメントと共に、地域の多様な関係者と顔の見える関係を構築し、医師会の取組として企画運営していくためには、医療知識やコミュニケーション技術、情報収集と分析力、マネージメント能力、客観的判断御能力が求められます。それらの能力をバランスよく配置した拠点が「ほたる」です。
 ほたるの活動では、2か月に1回の拠点運営委員会に加え、必要時には昼休みにウイークリーミーティングを行うなど、医師と直接顔を合わせて話すことを大切にされています。

資料をたくさん用意してくださり、丁寧に説明してくださいました。
中央左から、渡邊様、小野寺様、遠藤様、土田先生

 鶴岡市では様々な職種が一堂に会する機会がなく、他の職種の理解が深まらないという地域課題があったため、拠点では年4回の多職種連携会を企画されました。介護職のケアマネジャーが多く、医療知識不足による活動の困難があるために医療的な側面も研修会のテーマにされるなど、しっかりと地域の現状を踏まえ、各職種が活動しやすくなるよう、また連携が取りやすくなるよう、課題解決に向けた活動を進められています。また、この研修会では毎回アンケートで次回の希望テーマを尋ねたり、講演のみではなく、メーカーの展示コーナーや実技を交えるなど、内容も工夫されていました。さらに拠点では、他の学習会なども集約する窓口となるべく学習会集約カレンダーを作成して公開するなど、地域で活動する専門職の能力向上に寄与されています。
このような活動がきっかけとなって、大きな会ではなかなか聞けないことを聞ける勉強会を開催してほしいとの声が上がり、居宅支援事業所への出張勉強会が実現しました。「具体的に困っていることについての相談ができて心強い」との反応があるそうで、拠点が地域の専門職の大きな支えになっているようです。拠点としても組織の知識が増えるため、小さな勉強会を今後も行っていきたいとのことでした。
 このような繋がりは、23年度の拠点事業活動の中で会うたび声を掛け合い、顔の見える関係を構築されてきたことによるものでした。地域包括支援センターの方にも月1回ミーティングに参加してもらったり、一緒に福祉体育祭で地域包括支援センターの利用の仕方をテーマとした退院後の在宅移行の寸劇を行い、そこでほたるのPRをしたりと、地域包括支援センターと共に活動されていることは非常に印象的です。


手作りのほたるPRボードです。
丁寧に住民や関係者の方々に伝えたい情報を発信されている様子が伝わります。


 同じ医師会母体の地域包括支援センターでも、なるべくこちらから出向いて1年以上かけて顔の見える関係を構築して現在の活動に繋がっているとのことで、丁寧に関係を構築されてきた足跡が感じられます。また多職種連携の橋渡しを行う総合相談窓口は9か月間で52件と昨年度よりも利用が増えており、その9割ほどが専門職によるものでした。今後は他の包括支援センターとも連携を深められるように活動されるご予定です。
 また、IDをもつメンバーへの限定公開にて毎週ショートステイ空き情報提供を行っています。FAX、メール、ホームページからの確認で情報を集めてインターネット上で限定公開していますが、平成23年末には毎月100件台だったアクセスが平成24年2月には800件以上と大きく伸び、情報集約のニーズの高さがうかがえます。

鶴岡地区医師会 地域医療連携室 ほたるホームページ
http://www.tsuruoka-hotaru.net/

 歯科との連携では、歯科医につなぐ窓口がないことが課題であったため、訪問歯科診療の相談窓口を設置し、歯科医師会とのミーティングを継続されています。活動を通じて歯科医師とケアマネジャーとの連携が重要視され、連携がスムーズになってきたとのことです。アンケートを行った結果では訪問診療が可能、ケアマネジャーとも協力していきたいという歯科医も思った以上にいらっしゃり、今後の活動が期待されます。回復期リハビリテーション病院への歯科介入では、治療の必要性があるのに治療を拒否する方もいらっしゃるため、看護師が自信を持って説明できるようにと、協力してくれる歯科医師による院内研修会が予定されていました。
 薬剤師会のアンケートでは、訪問服薬指導が可能かどうかといった項目を追加して尋ねてもらっていました。訪問服薬指導については「要相談」とする薬局も多く、医師の理解が必要という回答も多かったとのこと。医師会の事業所である強みを生かし、医師への理解を促して、その結果を基に薬剤師会とも相談していくことを考えられていました。

 迅速な対応が求められる医療の情報共有ですが、大型病院とかかりつけ診療所間の情報の受け渡しがスムーズに行われないという課題が全国各地で見られており、その課題解決として鶴岡地区医師会では、ICTを用いた取組みを進めています。
 平成13年度に作成した共有型電子カルテシステム「Net4U(the New e-teamwork by 4 Units)」は、新宿区医師会のゆーねっとをベースに1生涯1患者1システムとして開発された在宅医療や医療介護連携の連携ツールです。平成24年末で50以上の施設が登録し、総登録患者数は3万名弱、総共有患者数は6千名程となっており、高齢者見守りパス「Note4U」とも連携しています。
 この「Net4U」は、「ID-Link」というネットワークサービスである「ちょうかいネット」と連携しており、病診連携情報共有システムとしても機能しています。医師会員の診療所における医療情報ネットワークに、主に病院の診療情報を共有するネットワークサービス(ID-Link)を接続させた病診連携情報共有システムは全国で初めてのことでした。こちらのシステムについては全国からお問い合わせがあり、その注目度は全国トップクラスです。「ちょうかいネット」は庄内地域全体における情報参照可能な共有ツールであるため、より広い範囲での共有も可能となっています。住民が広く分布するこの地域ではICTの有効性が生かされているのではないでしょうか。

 鶴岡市では3世代同居率が高かったのですが、最近はその割合も低下してきており、サービスを利用することも重要になってきています。しかしどんなサービスがあるというより先に介護保険そのものが理解されておらず、介護保険証がどれかわからない、なくしてしまうといったことも多く見受けられるそうです。今年はほたるの紹介のためのリーフレットやニュースレター「ほたる便り」を作成・配布したり、市が主催する集いに参加してほたるの活動や在宅医療に関するPRを行うなど、住民への啓発活動にも尽力されました。
 地域をつなぐ取組みを約2年続けてこられたほたるでは、これからほたるや鶴岡地区医師会が主導した取組みから、地域の様々な方を巻き込み主体的にみんなが取組む体制づくりにむけて進めていくことが今後の目標だと力強く話してくださいました。
 さらに質の高い地域となるよう地域と共に活動する鶴岡地区医師会、ほたるの取組みを学び、地域の医療を牽引する医師会としての誇りと力強さを感じました。

地域の課題を見据え、地道な関係づくりを通して
包括支援センターや関係組織と共に活動されている様子が
よくわかりました。今後のご活動も期待しております!

2012年12月20日木曜日

東京都訪問先:医療法人社団つくし会 新田クリニック

東京都訪問先:医療法人社団つくし会 新田クリニック
訪問日時  :20121220() 
事業担当者 :村松 伸晃 様

国立市では平成2021年度に東京都のモデル事業の一環として国立市在宅医療推進連絡協議会を立ち上げられ、平成23年度には国立市からの委託事業により、国立市在宅療養推進連絡協議会が立ち上げられました。新田クリニック様は市とともにこの協議会の事務局として関わってこられ、このたびの在宅医療連携拠点事業でも国立市在宅療養推進連絡協議会を核として話し合いを重ねながら活動をされています。

国立市役所健康福祉部高齢者支援課課長補佐
地域包括ケア・在宅療養推進担当係長
葛原千恵子様(保健師) (左)
左から、新田國夫医師、
国立市役所健康福祉部地域包括ケア推進担当課長
大川潤一様(主任介護支援専門員・社会福祉士・介護福祉士

 新田クリニックの在宅医療連携拠点活動の特徴は、国立市行政と国立市医師会、住民が密接に連携した活動が展開されているという点です。
これは、今までの新田クリニックの取組みの結果が、厚い信頼となり今回の取組みに繋がったのだと感じます。

新田先生は「在宅療養市民勉強会」として市内各地域の集会所などへ出かけ、1020人程の人々と直接触れ合い、ざっくばらんに「なぜ在宅なのか」といったお話をされています。地域の方からは「待っていました」「こんなところによく来てくれて」といった声もあり、質問攻めにあうこともあるとのこと。住民さん側から「先生が認知症になったらどんな医療と介護を望むのか」といったテーマが出されたり、住民の本音が聞けることも多いそうです。
国立市でも、まずは一人ひとりへの対応を大切にし、それを積み重ねて地域の課題や認知症の方の課題などの大きな課題を見つめ、そこに提案、対応していくという流れを大切にされていました。このような個々の住民を大切にした活動が、より暮らしやすい地域づくりに繋がっていくのだと感じられました。

また新田先生は、特に認知症の方の在宅療養は医療だけでは不十分であり、何が問題なのか、どのように仕組みを作っていくべきかを、かかわる人々が共有化して考えていくべきだとおっしゃっています。
新田クリニックの在宅医療連携拠点事業所活動の特徴として、認知症対策に力を入れて展開された事も大きな特徴です。
介護保険運営協議会では、生活実態も踏まえて現状のデータをきちんと把握することから始めようとされており、認知症の単身独居高齢者の地区別人数把握なども可能となっていました。
認知症になっても地域で安心して暮らせるためにはどうしたらいいか、自分は何ができるのか、これは生活者としての市民一人一人の問題です。在宅療養推進協議会では市民に参加を呼び掛け、認知症介護研究・研修センターの永田久美子先生の協力を得ながら、アクションミーティング(グループワーク)を重ねました。この中で出てきたテーマの一つに「市民の理解」があり、行政の理解を得て、10月の第3土曜日が国立市認知症の日と制定されました。市民の提案と施策がつながった成果です。
他にも、市と協力しながら様々な活動をされています。
たとえば、地域包括支援センターの業務を整理し、要支援の担当者を分けるなどして、市直営で地域支援事業の機能強化に注力されていました。結果的には目的が明確化して動きやすくなり、活動しやすい環境を整えることができたそうです。このように、環境を整えることも重要であると感じました。
また、食で基本的な生活基盤を支えることを重視され、介護保険では賄えない週14食の配食サービスを行政と協働して可能にされました。また、専門職のみならず市民向けにも摂食・嚥下研修を行っています。
在宅療養における他職種連携ツールである「生き活きノート」は、FromToで連絡欄を設けたところ相手がはっきりしてより効果的に利用できるようになったそうです。IT化に向けた検討もなされていましたが、中でもプリントアウトすると紙のノートと同じものが出てくるよう考えられており、これはわかりやすく素晴らしいアイディアだと思いました。ケアマネジャーさんたちに利用してもらえるよう、ケアマネ会議を開催して、このノートを紹介していくとのことです。

多くの活動をされており、たくさんの資料を拝見しました


 さらに、分科会として災害対策委員会も立ち上げられました。要介護者をターゲットとしており、医師会、歯科医師会、薬剤師会が参加しています。加えて市の様々な部課が入るので、所管だけにとらわれず、どのような地域にしていくのかという視点が大切になります。これは各職種・各部署が地域のあり方を考えるチャンスになっているとのことでした。市長も在宅療養に理解があることも、市の各部署挙げての取り組みに繋がっているようです。第5期の介護保険事業計画の中でも、地域包括ケアの実現に向けた医療と介護の連携が章立てされています。

防災や認知症対策などは行政や医療関係者だけでできることではなく、住民も含めて地域全体が繋がり取組むことで、いつまでも安全で安心して暮らせるまちづくりにつながるという事を活動の実際を通して強く感じました。

住民や行政とともに地域づくりをされており、
大変勉強になりました。

今後ともご指導の程よろしくお願い致します!!

東京都訪問先:株式会社ケアーズ 白十字訪問看護ステーション 暮らしの保健室

東京都訪問先:株式会社ケアーズ 白十字訪問看護ステーション
       暮らしの保健室
訪問日時  :2012年12月20日(木) 10時~12時
当事業担当者:所長 秋山正子様

 株式会社ケアーズ 白十字訪問看護ステーションが運営する、「暮らしの保健室」に訪問させていただきました。大きな団地のある商店街の一角にあり、入り口からもとても和やかな、ゆったりとしたカフェのような雰囲気が伝わってきます。

 白十字訪問看護ステーションは、大都会新宿区を中心に訪問看護活動を展開している、20年以上の歴史のある在宅医療連携拠点事業所です。
 平成23年度在宅医療連携拠点事業から関わっていただいております。

商店街の一角にある「暮らしの保健室」は、入りやすい雰囲気


 事業担当者の秋山様は市ヶ谷のマザーテレサとしてメディアに取り上げられた訪問看護師で、2007年から各地で在宅療養推進のための市民向けの講演活動を行っていらっしゃいます。(メディア情報
 イギリスには「マギーズセンター」という、がんの患者さんがいつでも気軽に相談できる場所があります。秋山様がこのような場所が日本でも必要だと考えていたところ、2010年に講演を聞いていた参加者の方から「70歳になるので何か社会貢献をしたい、自分の持っている店舗を安く貸すので活用してほしい」という申し出を受け、この「暮らしの保健室」が実現しました。ボランティアの方がどなたか常に在室しており、午後からは専門職にも相談できたりと、マギーズセンターと同じような無料で気軽に相談できる場所となっています。この1年間の利用者数は約1,500人、夏休みなどは小学生が遊びに来ることもあるそうで、地域に根差した場所になっていることがうかがえます。


年齢を問わず、心を開いて相談できるような環境

 暮らしの保健室はサロン的な要素を取り入れています。
相談する人が心を開けるような環境が必要であり、このスタイルが必要とのこと。訪問時にも複数の方がいらしていましたが、とても居心地がよさそうで、終始穏やかな談話が続いていました。

穏やかに居心地良く過ごされる皆様

 この「場所」があることが強みだと秋山様はおっしゃいます。利用者のみならず地域包括支援センターの職員や保健師、行政の窓口の方や、病院で働く専門職の方がいらっしゃることもあり、地域ケア会議の開催場所として活用されることもあるそうです。このような場に様々な立場の人々が集うことで、地域での療養生活についての理解が進み、連携が進んでいくことが強く期待されます。
 また、ここでは連携を題材に盛り込んだ勉強会も行われています。地域包括支援センターのスタッフや医師、自立支援の住まいをサポートする方などにも参加してもらえるよう声をかけ、それぞれの立場で興味を持ってもらえるよう事例展開をして討議をしていきます。話しやすい規模、空間の中で、小さな声を積み重ねてお互いの理解を深めるうちに、お互いのスキルアップにつながっているようです。
 参加の声掛けの際には、訪問看護で培った医師との顔なじみの関係が強みです。医師会からも紙面で連絡してもらうよう協力を得ていますが、在宅を専門にしている開業医の先生は医師会に所属していないことも多く、個別に直接お誘いしています。その結果、勉強会で初めて会う医師同士もいらっしゃるそうで、医師同士の連携のきっかけになる可能性も感じました。

 こちらの地域における特性として、資源が多く、患者も多いことから効率的な連携が取りにくい、という都市型の連携阻害要因を呈している事を伺いました。
 現在、新宿区民は30万人を超えており、急性期病院等の医療機関も非常に豊富な地域です。その中で、地域の多職種をつなぐ場が必要であり、時間をかけて多職種をつなぐ仕組み作りを進めておられます。
 新宿区には多くの大型急性期病院があることから、病院のスタッフにも、地域における患者の生活を中心とした支援について一緒に考えられる活動を進めていくことの大切さを強く感じ、人材育成教育などを含めて活動を続けられています。

所長  秋山 正子様

 多くの人口を抱える地域や広域の地域で活動を面的に展開するためには、核となり共に活動頂ける仲間を育成していく事も重要な視点です。
こちらでは、ボランティアリーダーの育成も行われており、継続的に地域が地域の力で支えあえるような取り組みが進められています。拠点事業所が全ての活動を継続的に抱えるのではなく、地域の方々の協力を得て、地域の中で活動を受け継がれていく事が、それぞれの地域の未来を変えていくものと感じます。

 ある方が在宅療養を希望された際、主治医が一人で開業されている先生であるために、24時間訪問体制の在宅療養支援診療所を副主治医として在宅での看取りまで至ったケースのお話をお聞きしました。医師会との連携のもと、このような連携調整の役割も担っていらっしゃいました。このようなケースが勉強会で伝えられることにより、ほかのケースでもより具体的に連携に向けた検討が可能になるのだと思います。

 大病院が近くに多いため、かかりつけが病院という方も多い地域ですが、この団地は高齢化率約47%で独居の方も多くいらっしゃいます。看取りまでできる街づくりの必要性を改めて強く感じ、街づくりの一環として「暮らしの保健室」があることがよくわかりました。

 秋山様はこの場で利用者を待つだけではなく、住民向けの健康教育の場にも何度も出かけて行ったり、若い人に向けてインターネットを活用したりと、様々な方法で「暮らしの保健室」を知ってもらえるよう広報活動を行っているそうです。
 行政から「がん相談窓口」事業受託しており、地域の1プレイヤーとして、行政と共に地域住民の健康増進につながる活動も展開されております。そのことが、広報の力もあり、広く住民に周知され、信頼される場となっているという事も感じます。
 地域の実情に応じて、地域の多くの方々を巻き込み、地域の未来を描きながら活動される姿に、在宅医療連携拠点事業所としての本質を感じることが出来ました。



生活に密着した気軽な相談場所は、
地域の中で今後ますます重要になります。
ご対応を頂き誠にありがとうございます!

今後ともご指導の程よろしくお願い致します!!

2012年12月13日木曜日

広島県訪問先:社団法人因島医師会 因島医師会病院


訪問日時:20121213日(木) 1300

事業担当者:地域医療連携室 豊永智和様
 
  本日は広島県尾道市因島にある在宅医療連携拠点事業所、因島医師会病院へ訪問させていただきました。
当日はJR尾道駅からしまなみ海道を通ってバスでうかがいました。
因島医師会病院は、昭和57年に開設された一般病床92床、障害者等一般病床52床、回復期リハビリテーション病棟53床の197床の病院です。
開放型病院であり、因島医師会病院に入院中もかかりつけ医が病院勤務医と共同診療を行う事で、安心感につながり、在宅復帰への情報共有も図られています。
 平成245月には隣接地に介護老人保健施設「ビロードの丘」が開設され、因島医師会病院と渡り廊下で結ばれました。
 

 
介護保険制度開始当初から、医師会立病院として地域の診療所の看護師にケアマネジャー資格を取ることを推奨していて、医師会立病院を会場として説明会や勉強会なども開催しておられました。
地域の診療所に勤務するケアマネジャー資格を有する看護師は、因島医師会ケアマネステーションの非常勤職員として活動しています。医師会立病院を退院し在宅復帰する方に、かかりつけ診療所の看護師兼ケアマネジャーが対応することによって、医療と介護の連携がスムーズに行われています。
現在では看護師だけでなく、薬剤師、鍼灸師、歯科衛生士の方もケアマネジャー資格を取得されています。

医療・介護資源が限られた島しょ部で、現在ある資源を有効活用している先進的な取り組みです。

バスからの眺め。天気が良く海がきれいでした。
  因島医師会病院では尾道市の南部地域包括支援センターを受託しています。
在宅医療連携拠点事業では、南部地域包括支援センターの担当地域の因島地区、生口島瀬戸田地区を対象に活動されます。因島と生口島は橋が開通する以前、「因島は尾道市」「生口島は三原市」と医療圏や商業圏が異なっていて、生口島の一部は三原市医師会の担当地区です。

現在は介護事業所との連携がすすみ、毎月開催している居宅介護支援事業所連絡会は因島、生口島で交互に開催されています。

 また地区民生委員との連携も、南部地域包括支援センター主体で行われており、居宅介護支援事業所と民生委員の連絡会を毎年2回開催しています。

 
因島と生口島を結ぶ生口橋
 
 
瀬戸内海


  尾道市では、内閣府の地域活性化総合特区の指定を受け、尾道地域医療連携推進特区として、「医療・介護情報基盤の構築に向けた取組」「離島患者等の在宅医療の充実に向けた取組」を行い、ICTを活用した発展的な地域医療連携モデルの確立を目指します。因島の隣島、細島(人口60人)の患者を対象に、医師、訪問看護師、薬剤師、患者の4ヶ所にiPadを置いて使用し、遠隔診療の実証を行っています。
 
IPAD活用開始のニュース映像も見せていただきました。

 
南部地域包括支援センターは介護老人保健施設「ビロードの丘」にあります。

因島医師会の居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・訪問介護事業所が併設されています。

 
当日はお忙しい中ご対応いただきありがとうございました。
今後の皆様のさらなるご活躍をお祈りしております。

2012年12月12日水曜日

広島県訪問先:医療法人楽生会 馬場病院

訪問日時:20121212日(水)1600

 

 事業担当者:地域連携室長 遠地大輔様

 
 本日は広島県竹原市の在宅医療連携拠点事業所、医療法人楽生会馬場病院へ訪問させていただきました。
  馬場病院は1903年(明治36年)開業され、現在一般32床、療養48床のケアミックス在宅支援病院です。
  竹原市南部に位置する離島である、大崎上島町や竹原市に隣接する東広島市安芸津町からも患者が来院する、地域に密着した病院です。法人内には居宅介護支援事業所、訪問看護、訪問介護、通所介護、通所リハビリテーション施設等があります。
大崎上島町との間には橋がなく、島内に入院施設もないため救急患者等は船で竹原市に搬送される現状があります。また、馬場病院の訪問看護師も大崎上島町まで訪問に行っているそうです。
 
  瀬戸内海には多数の離島があり、そのような地域で周辺地域の連携による支援提供体制が課題となっています。
 馬場病院では週2回広島大学の神経内科医による診療を開設していることから、神経難病患者が多く、馬場病院が在宅で看ている患者の約20名のうち、ALS(筋萎縮性側索硬化症という神経難病)で人工呼吸器を装着されて在宅療養されている方も2人おられるそうです。
竹原市は人口約3万人であり、隣接の東広島市(人口19万人)のベッドタウンとなっています。
高齢化率が県内でも高い地域であり、33%を超えています。また、独居や高齢者のみ世帯の増加によって地域での生活に則したネットワーク作りが重要な地域です。

 


 
竹原市内は、総数の医療資源は乏しい地域ではありませんが、小児科は1軒のみ、産婦人科不在のため、母子支援が十分提供できていない現状があります。
  住民に支援が必要な際に行政域を越え、近隣の三原市、東広島市、呉市へ行く必要があるそうです。行政域を越えた住民の移動がある地域では、限られた地域資源を広域地域で連携により上手に活用し、住民の安全安心な暮らしを確保するという視点が求められるのだと感じます。

竹原地区では、医師会、歯科医師会、薬剤師会、介護支援専門員連絡協議会など各職能団体の情報交換の場はありますが、多職種が一同に顔を会わせる機会がなかったそうです。
  在宅医療連携拠点事業では、各職種間の相互の交流や情報共有を図るため、各専門職が一堂に会する場として、定期的に多職種連携勉強会を企画実施されます。

 こちらの地域では郡市医師会のネットワークが構築されており、診療所―診療所連携は進んでいます。
  医療と介護・福祉の横断的な連携体制に向けて課題がありました。
特に、医療機関や町のお医者さんと介護・福祉関係者が連携する機会が特になく、連携の取り方から難しい地域の実情がありました。
そのため、医療と介護の地域資源を取りまとめた資源マップの作成を開始しました。

医療機関、介護事業所等の社会資源マップ作成にむけ、承諾書取得や記載内容アンケートを行います。各事業所担当者の顔写真付連絡先一覧を作成して関係者へ配布予定です。
  多職種勉強会の案内や、社会資源マップ記載内容アンケート等を各関係機関へ手渡しで配布することで、拠点事業への理解を得られたり、顔の見える関係ができているとのことです。

 情報だけではなく、互いの顔がわかることでも連携にむけて積極的になれます♪
 
 
竹原地区では医師会を中心とした在宅療養支援診療所間のチーム分けにより、出張時など主治医不在時にバックアップする協力体制を構築されているそうです。
 今回の事業では、在宅医療をサポートする訪問看護ステーション間の情報共有のため会合を開催されます。


 
(写真右より)馬場病院院長 馬場広先生、 心療内科医 馬場麻好先生

 
 馬場麻好先生によると、認知症の方は在宅で過ごされている方が多いのではないかとのことです。この地域はオレンジドクター(もの忘れ・認知症相談医)が多いそうです。オレンジドクターのいる医療機関には、次のような認定プレートが院内等に掲示されています。
 


在宅医療連携拠点事業活動を「らくらくネット」としてホームページを開設されました。
竹原地区医療介護マップも掲載しています。

 広島県では広島県医師会をはじめ、郡市区医師会の活動も盛んな地域です。

 馬場病院の在宅医療連携拠点事業活動の取り組みから、平成25年度に向けて郡市医師会の取り組みの一部として地域の面的展開にむけて動き始めています。

 地域の高齢者を含めた様々な住民が主体となり、みんなで地域を支えていく事がこれからの地域に求められています。多くの方々の理解を得て、地域が前に進める事が馬場病院の在宅医療連携拠点事業活動の大きな成果だと感じます。

 今後も地域と共に住民を支え、つなげていって頂きたいと願います。

当日はお忙しい中ご対応いただきありがとうございました。

今後ともよろしくお願いいたします。

広島県訪問先:折口内科医院


訪問日時:20121212日(水)1000

事業担当者:折口内科医院 院長 高橋浩一先生



 本日は、広島県中区の在宅医療連携拠点事業所、折口内科医院を訪問させていただきました。
広島県は地域包括ケアの先進地域であり、日本医師会 常任理事 高杉先生が活躍されておられる地域でもあります。
広島県は県主導により在宅医療推進活動を精力的に進められています。
 
折口内科医院は、呼吸器内科・緩和ケアを標榜する医院として広島市中区に2008年に開業されました。
開設当初より訪問看護等と多職種で在宅緩和ケアチームを組み、在宅だけではなく、施設で暮らす住民に対しても望まれる支援を提供しています。
4人の医師が連携し、強化型在宅療養支援診療所を取得し、24時間365日対応しています。
 折口内科医院では、平成24年度在宅医療連携拠点事業の活動を「在宅・施設医療ネットワーク広島」と名付け、医療機関のネットワーク、在宅医療のための多職種の連携、医療機関向けの教育・研修、市民への啓発活動を行うことで、在宅医療の推進を図ります。


 折口内科医院の在宅医療連携拠点活動の特徴は、事業開始当初より、特別養護老人ホームやグループホーム等生活の場である施設を含めた、『安心安全な最期まで暮らせる街づくり』という、大きな視点で連携アプローチを進められた点です。

高橋院長は、特別養護老人ホームの配置医師を担当しておられ、施設内にも緩和ケアや生活の場での看取りを希望しているがん患者がいる一方、施設の専属医師不在時の連携構築の必要性や、施設職員が看取りの知識や経験を持たないなど、医療の課題が多いことを実感されました。

在宅医療連携拠点事業は、地域で療養したいと望む方が療養できる環境になるように地域の体制作りを目的に開始されたモデル事業です。
在宅医療において、職種や地域の多様な機関(医療・介護・福祉)が連携していない、もしくは互いの活動や存在も知らない状況で一つの地域で住民を支援していることから、切れ目のない住民目線での支援提供ができない状況があります。
同様に地域の施設でも、同じ問題があり、入居者の方々に望む支援が提供しにくい現状にある事を把握され、取り組まれています。

 折口内科医院では、平成23年に「広島施設医療勉強会」を立ち上げ、勉強会を4回と施設医療のアンケート調査を実施しています。その結果「医師不在時の看取り」「看護職員の看取り教育」の2点の課題を抽出しました。
 そこで把握した課題をもとに、施設において医師不在時の医師間代理ネットワークの整備、施設職員対象の看取り研修・看取り小冊子の作成を重点課題として活動されます。

  施設医療については、在宅医4名と施設医師不在時の医師間代理ネットワークを整備し、特養4施設4医師にて稼働しています。
 施設看取りガイドブック作成については、広島県緩和ケア支援センターが作成したものを使用し、研修会を実施されます。また施設看取りマニュアル作成の指導アドバイスも今後実施予定です。

 広島県緩和ケア支援センターが作成した施設看取りのパンフレット。こちらを使用し施設職員に研修を実施されました。


(写真左2人目より)事務局長 木本芳弘様、 折口内科医院院長 高橋浩一先生、
看護師・介護支援専門員 名越静香様、 広報担当 杉田勝利様
 
 
 折口内科医院の活動の特徴として、広報担当者を配置した点です。
多くの住民や関係者に情報を届けることが出来れば、より多くの住民の協力や理解を得ることが出来ます。
 住民が自分たちの暮らす地域について知り、考えることは街づくりの重要な要素だと感じます。
 
 広島市には、広島赤十字・原爆病院、広島大学病院、広島県立広島病院、広島市立広島市民病院、広島市立安佐市民病院など、がん診療連携拠点病院が5ヶ所あり医療資源が豊富です。
また、介護保険事業所も豊富にあるそうです。
  拠点事業担当者の看護師・介護支援専門員の名越静香さんは、がんの方などの医療ニーズが高い人が退院後在宅療養し、住み慣れた場所での看取りまで可能にするためには、在宅医の拡充や訪問看護との連携による負担軽減策の他、在宅療養開始時に介護ベッドを借りるなどのサービスを円滑に導入するために、急速な病状の変化に対応できるような、迅速な介護保険認定の手続きや調査が必要だ、と考えておられます。
地域包括ケアを考えるうえでは、実情に合った形で規定を考えていくことが必要だと学ばせていただきました。
長年の経歴から得られた見識を今後も発信していただき、引き続き在宅医療・介護連携の構築に寄与いただきたいと考えております。
 
  広島県では、広島駅前の大規模な再開発と病床整理を進めています。
また広島県医師会と広島県との協働により『地域包括ケア推進センター』を設置し、いつまでも安心安全に暮らし続けられる街づくりに向けて取り組んでいます。
全県下で新しい街づくりにむけて動きだす中、連動し、地域にある折口内科医院では暮らしの場で一人一人の患者や住民を最期まで暖かく多職種連携で支えていけるネットワーク構築に積極的に取り組まれています。
地域の仕組み作りと地域を支える方々の協働が最期まで地域で暮らしたいと願う住民の暮らしをかなえることが出来るのだと感じます。
 

在宅・施設医療ネットワーク広島のホームページ。
在宅医療に関する質問についてお答えいただいているコーナーもあります。
 
 
 
当日はお忙しい中ご対応いただき誠にありがとうございました。
今後も折口内科医院の皆様のご活躍を期待しております。